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語学に関する素朴な疑問など
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2人称のはなしの続き

スペイン語の歴史についてかかれたものによると、昔は2人称複数形のvosを2人称単数の尊称としてつかっていたのが、徐々に尊称としての機能を果たさなくなったというのである。túというほど親しくない相手にはとりあえずvosといっておきゃ無難だろう、という感じでvosが多用されれば相手を敬うという意味は薄れ、場合によっては慇懃無礼に聞こえることも出てくるだろうし。これって日本語の場合と同じじゃありませんか。スペイン人もやっぱり相手をどう呼ぶかでは悩んでいたのだなあ、きっと。やがてvuestra mercedという呼び方から今の2人称遠称のustedが使われるようになったという経緯であるようだ。中南米のスペイン語圏では、こういう変化が本国で起きる前のスペイン語が伝わっていたため、人称代名詞の使われ方がちょっと異なっている部分があるようだ。2人称複数形のvosotrosを使わないで全部ustedesを用いるというのも、こういうことに関係するんでしょうね、詳しいことは書いてないが。

ブラジルのポルトガル語の代名詞の表をみると、2人称が書いてないので、何じゃ、これは? と思ったのは私だけだろうか。本国のポルトガル語では2人称単数(tu)はあるようだが、複数形はやっぱり使われなくなっているようだ。2人称がないのにどうやって相手を呼ぶのかと思ったわけだがvocêという、文法上は3人称扱いの2人称を使うのですな。スペイン語のvosに似た形だがあっちは文法上2人称複数形の2人称単数用呼称だったので、ポルトガル語のvocêがスペイン語のvosに対応する単語だったのかどうかは不明。このほかにo senhor, a senhoraという3人称扱いの2人称もあるらしい。vocêが近称でo senhor, a senhoraが遠称あるいは尊称ということであろうか?
2人称の近称というのは、相手との距離感が微妙なんだと思うんですよね。こっちは親しい相手と思ってtuを使ったのに相手はこっちにそれほど親近感をもっていなくて、なんでtu呼ばわりするんだ、と不快感を持つこともあるかもしれないし、その逆で遠称を使って呼んだらよそよそしいと思われたり... もともとその言葉を母国語にする人同士であればその距離感覚にある程度の共通認識がありトラブルになりにくいが「植民地」ではそれがないため、近称を使いにくくなり、無難な尊称を多用するうちに、尊称としての意味合いが消失する、ということかと。ところが尊称としての機能がなくなったvocêをみんなに使っているとまた「あいつもおれも同じかよ」と思う人が出てきて、別の呼び方を編み出す羽目になったのではないかと思ったわけである。o senhor, a senhoraなんて、日本語で「そこの旦那さん」とか「奥さん」とかいうのと一緒ではないか。日本語の文法書に、3人称として「旦那さん」「奥さん」という「人称代名詞」が載っている、そんなわけはないが。
by xabon | 2005-07-21 06:16 | 文法
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