大きい,にたいして,小さい,良い,に対して,悪い,など,物事の度合いを表す形容詞には,よりその度合いの弱いことを示す対義語がある(なんだかうまくない説明だなあ)というのが当たり前のように思っていて,英語でも,long - short, big - small, old - young などという例がある。それが当然と思っていたところ,フランス語では,深い profond に対する,浅い,という意味の形容詞がない,と辞書に書いてあるのでちょっとびっくり。浅い,は peu profond(字義通りなら,ほとんど深くない,というようなところか)と表現するそうである。
日本語や英語ではあまりこういう例を思いつかないが,ないのではなく自分が思いつかないだけかもしれない。少なくとも「大小,高低,善悪,老若・新旧などといった日常よく使われる形容詞に関しては,ちゃんと別々の単語が用意されていると思うが。フランス語でも,大きい grand,に対しては,小さい petit,という形容詞がちゃんとあって,「小さい」の代わりに「ほとんど大きくない」などということはないようだ。どうして「深い-浅い」に関してはこういうことになったのか,よくわからない。セーヌ川に浅瀬がなかったから,というわけではあるまいが,深い-浅い,という対立概念があまりなかったのだろうか?
「何々である」ことを表す形容詞に対する反対の性質を現す固有の単語がなくて「ほとんど何々でない」というしかないケースが,フランス語でほかにあるかどうかは知りません。